歯磨きしているのにムシ歯に…!?
最近よく聞く「初期ムシ歯」とは

新年度が始まり、昇進や異動などで新しい環境に身を置いてますます多忙になるグルーメンも多いはず。慌ただしい日々の中でも、忘れてはいけないのがデンタルケアだ。時間がないからといって歯磨きを雑に済ませたり、時間が取れず定期検診をサボったりしていると、ムシ歯や歯周病に発展してしまう可能性はもちろん、口臭や黄ばみの原因に。そこで、ライオンのオーラルケアマイスター(歯科衛生士)・河村有美子さんに、デンタルケアに関するさまざまな疑問をぶつけてみた。

 

口の中は細菌だらけ!? 知っておきたいムシ歯のメカニズム

 

まず「なぜムシ歯ができるのか」という基本的なことから解説してもらった。

 

「歯に付着する歯垢の中にはムシ歯菌をはじめとする400種類以上もの細菌がいると言われています。物を食べると、ムシ歯菌が食べ物の中の糖分を栄養に酸を発生させ、その酸によって歯からカルシウムやリンなどのミネラルが溶け出していく、これがムシ歯のメカニズムです。ムシ歯になりやすいのは、特に歯ブラシが届きにくい歯と歯の間、奥歯の噛み合わせの溝、歯と歯ぐきの境目の3ヵ所。このポイントをしっかり磨くことが大切です」

 

ムシ歯が進行すると歯に穴が空いてしまい、ムシ歯の部分を削ったり、人口の詰め物やかぶせ物などで修復したりといった治療が必要に。そこまでひどくなったら歯科医に治してもらうしか方法はないが、早めに手を打つことでムシ歯の進行は食い止めることが可能だという。その“ムシ歯になる前の段階”が最近TVCMなどでもよく耳にする「初期ムシ歯」だ。

 

「初期ムシ歯」の段階でムシ歯の進行を食い止める!

 

「歯のカルシウムとリンは内側から外に溶け出していきます。歯の表面の一層を薄く残して中がスカスカになっている状態、これが『初期ムシ歯』です。まだ歯の表面が繋がっているので、この段階ならスカスカになってしまった部分に唾液中のカルシウムとリンをもう一度取り込む=再石灰化することで、健康な歯を取り戻すことができますよ。再石灰化を効率良く行うためには、歯をきちんと磨いて歯垢を残さないようにすること、再石灰化を促進する『フッ素』を取り入れる習慣をつけること、そして、ムシ歯が進行していないか、歯科医でのチェックを定期的に受けることが大切です。初期ムシ歯はしみることがほとんどないので気づきにくいのですが、白濁している、着色して茶色っぽくなっているなど初期ムシ歯のサインがでていることがあります。自分でもチェックはできますが、やはり歯科医にちゃんと診てもらうのが確実ですね」

 

ちなみに、ライオンで「歯磨きに自信がある」という男女100名を対象に歯の状態のチェックをしたところ、20、30代で初期ムシ歯になっている人が50%に上ったという。自分はきちんと歯を磨けているから大丈夫と思っている人でも、普段のデンタルケアを一度見直す必要がありそうだ。

 

それにしても、初期ムシ歯であれば削らずに治せるというのは朗報だ。次回は初期ムシ歯の再石灰化を促進させる「フッ素」の知られざるパワーを紹介しよう。

 

 

取材・文/芳賀直美(OUTSIDERS Inc.)