「肌が弱くて化粧品を使えない」「皮膚科に通っても肌荒れが治らない」という男達は意外に多いが、体質だから仕方ないと諦めるのはまだ早い。その体質を改善するために「漢方」を試してみてはいかがだろう。
自然界の中にある生薬を用いた漢方は、5~6世紀ごろに中国から伝わった医学を基に、日本国内の風土や日本人の体質などに合わせて独自の発展をした医療法。今その漢方医療が「現代医学では治せない肌トラブルが治せる」として、欧米諸国からも注目を浴びる存在になっているのだとか。なぜそこまで漢方が注目されているのだろうか? 漢方に関する気になるアレコレを、「あらなみクリニック」の総院長を務める皮膚科医・漢方医の荒浪暁彦先生に聞いてみた。
肌トラブルは体の不調のサイン
「漢方医学には『皮膚は内臓の鏡』という考え方があります。ストレスが溜まったり寝不足が続いたりすると肌が荒れることがありますよね。これは肌トラブルが体内の不調を示すサインとして皮膚に表れているということ。つまり肌トラブルを治すためには、外からケアするだけではダメで、体内(内臓)の不調から治す必要があるんです」
荒浪先生によると、皮膚科を受診した時に処方されるステロイドなどの外用薬は、使用中は効果があっても、使用をやめると再発したり、使い続けているうちに強い効き目のものでないと効果が出なくなったりすることもあるのだという。実際、荒浪先生の元には「ステロイドを塗っても効かなくなった」「塗るのをやめたら悪化した」という患者たちが駆け込み、その多くが漢方薬によって快方に向かっているのだそうだ。では漢方薬は体内でどのように作用し、肌トラブルを解消してくれるのだろうか?
「漢方医学では内臓を『気(き)・血(けつ)・水(すい)』と『五臓(ごぞう)』という概念で捉えます。特に体も肌も健康であるためには気・血・水がバランス良く体内を巡っていることが重要です。『気』は生命活動のエネルギー、『血』は血液やさまざまなホルモン、『水』は体液・リンパ液のこと。この3つのうちどれかひとつでも異常があると、全体のバランスが崩れて体調不良、肌トラブルを引き起こします。気・血・水それぞれの異常を正し、3つのバランスを整えるのが漢方医学の考え方なんです」
同じニキビや吹き出物、アトピーでも、気・血・水のどこに原因があるかによって医師が処方する漢方薬は変わってくるのだという。自分では思いもしなかった原因が、肌トラブルを引き起こしている場合もあるのだ。以下に挙げたのは、主な気・血・水の異常と、それぞれに効く漢方薬の種類。当てはまる症状がある人は注意しよう。
・気の異常「気虚(ききょ)」
気が不足した状態。胃腸虚弱、体がだるい、無気力、疲れやすいなど
代表治療薬:補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)など
・血の異常「瘀血(おけつ)」
血がドロドロした状態。くすみ、しみ、クマ、シワ、不眠など
代表治療薬:桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
・水の異常「水毒(すいどく)」
水の巡りが悪い状態。肌のジクジク、むくみ、めまい、立ちくらみなど
代表治療薬:防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)、五苓散(ごれいさん)
自分に最適な漢方を選ぶならまずは受診を
漢方といえば薬局やドラッグストアでも売られているのを見かけるが、市販の漢方も病院で処方されるものと効果は同じなのだろうか?
「市販の一般用漢方薬も医療用漢方薬も同じ医薬品ですが、前者は医師の処方がなくてもドラッグストア等で購入できるため、生薬の成分量が少ないものも中にはあります。漢方は組み合わせることで相乗効果がアップする薬。医師の診断を受けて、自分に合った組み合わせの漢方薬を処方してもらうのがベストといえるでしょう。また、どんな薬にもいえることですが、漢方薬も体質によっては副作用が出る場合もあります。副作用が出た場合でも適切にケアしてもらえるよう、やはり漢方医学に精通した医師に診てもらうことが肌トラブル解消の一番の近道といえますね」
漢方に詳しい病院や医師はポータルサイト「漢方ビュー」などで検索することができるので、まずは自宅や会社から近い病院で相談してみては。健康保険も適用されるため、漢方薬の処方だけなら高額な費用を心配する必要もなさそうだ。
荒浪先生曰く、漢方は「薬膳料理のように健康を維持するためのものなので、一生飲み続けられる体にいいもの」とのこと。諦めかけていた肌トラブル、漢方で今度こそ治るかもしれない。
取材・文/芳賀直美(OUTSIDERS Inc.)