花粉症じゃなくても起こりうる!
『花粉肌荒れ』の仕組みと対処法

日本人の4人にひとりが花粉症ともいわれ、今この瞬間にもくしゃみや鼻づまりなどの症状に悩まされているという人もいるだろう。また、この時期は肌が赤らんだりかゆくなったりと、肌荒れにストレスを感じる方も多い。ところが、実は花粉による肌荒れは花粉症の人に限った話ではないのだ。

 

「自分は花粉症ではないから大丈夫」は間違い!
『花粉肌荒れ』が誰にでも起こるワケ

「花粉症は、主に鼻孔粘膜や目の粘膜に花粉が付着することで起こりますが、最新の研究で、花粉が肌に付着すると、花粉症でない人でも肌荒れを起こす可能性があることがわかりました。従って、花粉症の人でなくても『花粉肌荒れ』予防策を講じることが大切なのです。」そう教えてくれたのは、皮膚科医の日比野佐和子先生。

 

それでは、花粉肌荒れはどのように起こるのだろうか。多くの花粉症の原因にもなっているスギ花粉のタンパク『Cryj1(クリジェイワン)』は目や鼻のアレルギー症状を引き起こす物質。これが肌に付着すると、通常は活動していない肌の中の『トロンビン』という酵素を活性化させてしまうことで表皮細胞が興奮状態になり、肌荒れの原因に。そしてこれは花粉症でない人にも起こり得ることを資生堂が発見した。

 

また、春先は花粉や紫外線といった外的刺激の増加や、新生活に向けての精神的ストレスにより、肌免疫とも呼ばれる肌のバリア機能を担うランゲルハンス細胞*1 の減少も見られ、そのことも要因のひとつだ。

*1:免疫系にどう対処すべきかの指令を出し、肌への刺激を鎮静化する。

 

花粉肌荒れ予防のポイント

花粉肌荒れ予防のポイントは、花粉をなるべく肌に付着させない、かつ、花粉が付着しても対抗できるよう肌のバリア機能(肌免疫)を整えておくことが重要だ。

 

マスク選びは肌にやさしいものを

マスクは摩擦の刺激を与えないよう、直接肌に接触する部位に柔らかい素材の不織布を使用しているものや綿・麻・絹などの天然素材のものを選ぶのがベター。

 

マスクとあわせ、花粉をバリアするアイテムを活用

マスクをしていても油断禁物!正しく装着されていないと隙間から花粉が侵入して肌に付着してしまう。また、花粉・ちり・ほこりなどの空気中の気になる微粒子汚れや、紫外線ダメージ・乾燥などの外部刺激から守ってくれるスキンケアや日焼け止めなどで肌を覆っておくことで花粉の付着を軽減できる。

 

花粉が多い日の外出を控える

花粉が特に大量に飛散するのが、晴れて気温が高い日、空気が乾燥して風が強い日、雨上がりの翌日や気温の高い日が2~3日続いた後と言われている。気候を意識して外出を検討しよう。

 

帰宅したら時間をおかずに洗顔し、しっかり保湿

物理的に花粉をガードするためにも、帰宅したら時間をおかず、手をしっかり洗った後に、刺激の少ないよく洗顔料で洗い流すこと。泡立つ洗顔料が肌にやさしくオススメだ。

特に皮膚の薄い箇所は水分が蒸散し乾燥しやすく、細胞間脂質が十分に生成されずにバリア機能が低下しがち。洗顔後やお風呂上がりはなるべく早いタイミングでしっかりと保湿するように気を付けよう。

また、日中に数回、花粉からガードしてくれる保湿ミストをすることでも、花粉ガードと保湿が同時に叶う。

 

外出を控えていても花粉対策を怠らない

今年は自宅にいる間も、換気を頻繁にする必要があるため花粉が部屋に侵入する可能性がある。ベランダで洗濯物を干す間やちょっとした外出でも、衣服や髪の毛に付着した花粉を部屋に持ち込んでしまうリスクがある。外出を控えているときでも、花粉から肌を守るアイテムを使用するのが良いだろう。

 

身体の内側からも対策を

花粉肌荒れの予防には、上記の対策に加えて食生活の見直しも効果的。肌のバリア機能を高める栄養素を含んだ食品を積極的に摂ることで、花粉の季節もゆらがない美肌を目指そう。

 

オススメは抗酸化物質(ビタミンA・C・E)

ビタミンA・C・Eは抗酸化成分としてだけでなく、皮膚や粘膜を正常に保ち、免疫力を維持する働きがある。緑黄色野菜やフルーツは抗酸化物質の宝庫だ。

ビタミンCは抗酸化物質の代表格なので、春にかけて旬のキャベツやいちごをたっぷり食べるのがオススメ。ブルーベリーなどに含まれるポリフェノール、サケなど赤い魚介類に含まれるアスタキサンチンなども積極的に摂りたい抗酸化物質だ。
また、腸内環境を整え、自律神経を安定させることも免疫細胞が正常に働くことを助けてくれる。
腸内細菌の善玉菌である乳酸菌の多いヨーグルトが肌の保湿機能を上げるという研究報告も。肌のバリア機能を上げてくれるのでこちらも積極的に摂取しよう。

 

「食べすぎが肌荒れを助長」は本当

食べすぎて腸の働きが鈍ってしまうと、肌の健康維持に重要なビタミンB群の吸収障害が起こり、肌荒れや皮膚炎を起こしやすくなる。睡眠不足や不規則な生活など、日常生活におけるストレスも肌荒れに影響。軽い運動や趣味などの自分なりのストレス発散法を取り入れよう。

 

【監修者】 皮膚科医 日比野 佐和子(ひびのさわこ) 先生

医療法人社団康梓会 Y'sサイエンスクリニック広尾統括院長、大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学特任准教授、医学博士。内科医、皮膚科医、眼科医、アンチエイジングドクター(日本抗加齢医学会専門医)。同志社大学アンチエイジングリサーチセンター講師、森ノ宮医療大学保健医療学部准教授、(財)ルイ・パストゥール医学研究センター基礎研究部アンチエイジング医科学研究室室長などを歴任。中医学、ホルモン療法、プラセンタ療法、植物療法(フィトテラピー)、アフェレーシス療法(血液浄化療法)などを専門とする。アンチエイジングの第一人者として国際的に活躍するほか、テレビや雑誌などにも数多く出演。

 

【参照元】資生堂による調査レポート