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「お洒落は足元から」という言葉もあるように、本当にお洒落な人は皆足元まで抜かりないもの。
良い靴をいつまでも美しく、長く履き続けるためには日頃のお手入れが欠かせない。中でも、ケアが行き届いているかどうかがはた目にもハッキリ分かってしまうのが、革靴。
今回は意外と知らないシューケアをテーマに、革靴のプロに基本の靴磨きを1から伝授してもらった。
工程を重ねるほどにどんどん美しく磨き上がる様子に、かなりの達成感を感じられるだろう。休日に没頭できる新たな趣味のひとつとしてもオススメだ。
記事後半では、靴磨きの頻度や普段のお手入れのコツをQ&A形式で紹介する。
お話をお伺いしたのは、シューズメーカーchausser(ショセ)の森島 達也さん。
chausser(ショセ)は「履く人がいつまでも愛着の持てる靴」をコンセプトに靴作りを行う日本の革靴ブランド。
今回訪問したメンズ商品を取り扱うchausser le coin(ショセ ル コワン)の店内には、革靴以外にも革小物やシューケアアイテム、セレクトされたシャツや靴下などが揃う。
大切な靴を長く履くためのシューケア
基本的なシューケアに必要な道具はコレ!
時計回りに、
1.シューキーパー 6,380円(税込)
2.はぎれ布(着なくなったTシャツなどでOK。素材は綿がオススメ)
3.ホースブラシ(汚れ落とし用) 1,320円(税込)
4.クリーナー 660円(税込)
5.保湿クリーム 990円(税込)
6.ペネトレイトブラシ(クリーム塗布用)440円(税込)
7.ワークブラシ(仕上げ用)880円(税込)
※はぎれ布以外はchausser(ショセ)店頭で上記価格にて取り扱いあり。
今回磨いていく靴はこちら。
C-7030 60,500円(税込)
近くで見ると色褪せやつま先の擦れが分かり、やや使用感を感じる。
ステップ1 ブラッシングで表面のホコリや汚れを取り除く
ブラッシング前は靴ひもを外し、シューキーパーを入れる。
形を整え、革をピンとのばす役目を果たすシューキーパーは、是非持っておきたいアイテム。
理想は縦横どちらもサイズがピッタリで、靴の上から手で押したときに、硬さが感じられるもの。靴に入れた時に、甲のシワがピンと伸びるかどうかも要チェックだ。素材は、吸湿性があるという点で木製がオススメ。
靴ひもはそのままでも問題ないが、羽の内側やベロにもホコリが入りこんでいることが多いため、外してから手入れを進めていくのがベター。
ブラッシングには、毛が柔らかい馬毛のブラシを使用。表面に着いたホコリや隙間に溜まった汚れをかきだしていく。
特に汚れがたまりがちなのが甲のシワ。シワと平行にブラッシングするのがポイントだ。また、ブラシの角を靴にぶつけないように注意。
力は入れず、ササっと汚れを払っていく。
★Point★
ブラシの使い方は「ゴシゴシ」こするようにではなく、一方向にサっと払うように。
特に汚れが溜まりやすい甲のシワは、平行にブラシを動かし丁寧に汚れをかき出す。
ステップ2 クリーナーで汚れを落とす
ブラッシング後の革靴は、取り切れなかった細かな汚れだけでなく、前回磨いた時の古いクリームが残存している。それが蓄積していくと革が「厚化粧」状態になって硬くなり、最悪の場合、革が割れてしまうこともあるそう。
そこで、ステップ2はクリーナーを使って、革を一度「すっぴん」の状態に戻していく。
手に巻けるサイズの布を用意する。端切れやいらないTシャツを切ったものでかまわない。サイズ感は下の写真参照。
今回使用するのは綿100%の布地。ステップ3以降でも面を変えて同じものを使用する。
布を巻きつけた指先にクリーナーを少量出して馴染ませる。
今回使用したのは水性タイプのクリーナー。革に浸透してしっかり汚れを取ってくれる。
クリーナーが布に馴染んだら、力は入れずに靴の表面を軽くこする。クリーナーの量が多すぎたり、布に馴染んでいない状態で靴に触れてしまうと、一部分に入り込みすぎてしまい、シミになってしまうことも。特に、ベージュ、ブラウン系など明るい色の革靴は目立ちやすいので注意。
足の内側など目立ちにくいところから始めて、全体に広げていくのがオススメ。
ある程度拭き取っていくと、靴の表面が少しマットになってくる。それが汚れを落とせた目安だそう。
やりすぎると革の元の色まで拭き取ってしまうので、ほどほどに。
指先が渇いてきたら、同じようにクリーナーをつけ足して全面を拭いていく。この工程でも、甲の部分はシワと平行にこすろう。
全面磨き終わった後の布地。汚れと古いクリームが取れてきた。
★Point★
クリーナーは少量ずつ使用。布にしっかり馴染ませてから靴に触れる。
ステップ3 クリームで革表面を保湿
クリームは、スキンケアでいうところの「保湿」の役割。革に栄養分を与えてくれる。
さまざまな色の革靴があるように、クリームのカラーバリエーションも豊富。
中でも一番便利なのが、無色(ニュートラルカラー)のクリーム。どんな色の革靴にも使えるので1つあると重宝するとのこと。
今回は靴の色と合わせて黒を使用。同色のクリームを使うことで、擦れなどの傷や色褪せを目立ちにくくしてくれる。
クリームの色の違い(左:無色 右:黒)
クリーム用のブラシにクリームを少量(米粒大)取り、ふたの裏で馴染ませてから靴に塗りこんでいく。
クリーナー同様に目立たないところからやさしく塗り始めるのがオススメ。
ブラシにクリームがなくなってきたらつけ足すが、ここでもつけ過ぎに注意。片足全体で米粒3~4粒程度を薄く伸ばしていく。
万が一塗りすぎてしまった場合は、この後の工程で拭き取ればOK。
クリーナー使用時のように、指に布を巻いても代用できるが、ブラシを使用するほうがクリームの伸びが良く、隙間までしっかり塗り込める。ブラシはクリームの色ごとに使い分けよう。
下の写真のように装飾がある靴は、指で塗ると余分なクリームが残ってしまいがちなので特にブラシ推奨とのこと。
★Point★
クリームの使用量は片足全体で米粒大を3~4粒程度が目安。薄く伸ばしていく。
木製のシューキーパー使用時は、クリームがつかないように注意。
ステップ4 仕上げブラッシング
ステップ3で塗布したクリームを、ブラシを使って隅々まで行き渡らせていく。
靴の表面を覆うクリームの塗りムラを均一に伸ばしていく工程だ。
ここで使うブラシは、最初のブラシと違って、よりコシの強いもの。(豚毛製がよく使われる)
左:汚れ落とし用ブラシ(ステップ1) 右:仕上げ用ブラシ(ステップ3)
ここでも気を付けたいのが、ブラシの角をぶつけないことと、甲のシワは平行にブラッシングすること。
また、ステップ3で使用するブラシには、クリームの色がついてしまうので、クリームブラシと同様、色別に使い分けよう。
★Point★
ステップ1同様、ブラッシング時に力は入れない。クリームをまんべんなく塗り広げていくイメージ。
ステップ5 乾拭き
靴磨きもいよいよ終盤。最後の工程は、乾拭きだ。表面に残った余分なクリームや、ベタつきを拭き取っていく。
ステップ4まで終えた革靴。磨く前に比べると、かなり色ツヤは復活しているが…。
乾拭きをしないと、履いた時にホコリが付着しやすくなるそう。それでは、せっかくキレイに磨き上げてもこれまでの頑張りが水の泡に…。
また、乾拭きの摩擦によってクリームの中に含まれている蝋(ろう)がツヤに変わるため、仕上げには欠かせない。
ステップ2で使った布を、未使用の面が指先に来るように巻き付け、隙間までしっかり拭き取る。ここでも力は入れず軽く拭くことを意識、爪を立てないように注意。
全体を軽く拭き上げた。こんなに余分なクリームが残っているとは…。
布がある程度汚れたら、未使用の面に変えて再度拭き進めていく。
靴の表面にクリームが残っていると、ズボンの裾について汚してしまうことも。今回のように色付きのクリームを使った場合は、特に念入りに乾拭きしよう。
布につくクリームの色が下の写真くらいまで薄くなればOK。
最後に紐をつけて完了。
★Point★
乾拭きは布にほとんど色がつかなくなるまで、しっかりと。
靴磨き終了!その変化は?
磨く前の左足と比較してみる。
(左:Before 右:After)
磨き上げた右足は、本来の色ツヤが復活し、まるで新品のような生き生きとした印象に。
つま先の擦れもほとんど目立たない。
※今回は撮影のため片足ずつ工程を進めてもらったが、実際は両足一緒に進めていく。
磨き終えると以下の仕上がりに。
慣れると10分~15分ほどで両足をピカピカに磨ける、と森島さん。
きちんと手入れすることで、お気に入りの一足がさらに愛着の湧く存在に変わること間違いなしだ。
靴磨きQ&A
Q1.長持ちさせるためには、どれくらいの頻度の靴磨きがベスト?
A1.2~3度履いたら1度磨く、くらいのペースがオススメ。
ブラッシングは履くたびでもOK。ササっと汚れを払うだけでも革の状態維持として効果的。
また、1度履いたら、木製のシューキーパーを入れて風通しのいい日陰で1~2日間休ませると良い。
Q2.もっとツヤを出したい時にはどうすればいい?
A2.今回使ったクリームだとツヤ出しに限界があるため、固形の油性ワックスを使用する。
通常通りの工程の最後にワックスを塗り、少しずつ水を足しながら磨く。
少し手間がかかるが、とにかくピカピカにしたい、という方にはオススメ。
ワックスのカラーバリエーションも豊富だそう。写真はニュートラル。
Q3.湿度が高い梅雨時期や夏場の保管時、特に気を付けることは?
A3.帰宅後はブラッシングで表面の汚れを落とし、シューキーパーを入れておく。
特に湿気が気になるときは乾燥材を入れても◎
カビ防止に除菌スプレーも有効だが、使用時はシミにならないよう注意。
Q4.防水スプレーを使用した場合のお手入れは?
A4.革に負担がかかってしまうため、可能であれば使用ごとにクリーナーで拭き取るのがベター。その際にはクリームで保湿を忘れずに。
Q5.雨で革靴が濡れてしまった…そんな時は?
A5.水分を拭き取り、中敷きが外せるものは外す。
壁などに立てかけるようにして1~2日風通しのいい場所で乾燥させる。
中まで濡れている場合には新聞紙などの紙や布などを丸めて靴の中に入れ、水分を吸い出す。
ある程度水気が取れたらシューキーパーを入れ、靴が乾いたら基本の靴磨きの要領で手入れする。雨に濡れた革は固くなっているはずなので、丁寧に。
※紙を入れる場合はこまめに交換すること。また、新聞紙を使用する際はインクが付いてしまうことがあるので外装を別の紙で包むと良い。
Q6.プロにメンテナンスを依頼するべきケアは?
A6.ソールや靴底の減りに対する補強修理。
※chausser(ショセ)で購入した靴は、持ち込み修理を受け付けている。相談にも乗ってもらえるそう。
おすすめ商品紹介
右:C-7037 42,900円(税込)
2020春夏の新作。サンダルほどカジュアルになりすぎず、遊び心あるこなれた印象を与えてくれる。リラックス感ある装いに合うことはもちろん、はずしアイテムとしてアクセントにもなりそうだ。これからの季節にピッタリの一足。
中:C-793 50,600円(税込)
一足は持っておきたい定番の形。ビジネスシューズとして人気だそう。スタンダードながら、ショセらしい丸いつま先のフォルムに個性が光る。
左:TR-001M 22,000円(税込)
TRAVEL SHOES by chausser(トラベルシューズ バイ ショセ)というシリーズ。
天然の革に防水加工が施されているので雨の日でも安心。ゴム製の紐なので、結んだまま履くことができるなど、“カッチリ”とした革靴の見た目はそのままに、気軽に履ける優秀なアイテム。グリップ仕様の靴裏は世界地図になっていて遊び心も。