春から始めるデンタルケア特集、続いては気になる“口臭”について。起床時や緊張時に口臭が強くなることについてはこれまでの取材でも紹介してきたが、実はムシ歯も口臭の原因のひとつだという。今回もライオンのオーラルケアマイスター(歯科衛生士)・河村有美子さんに話を伺い、ムシ歯と口臭の関係について聞いてみた。
「口臭の原因の8割は口の中にあると言われています。口の中の病気が関係する口臭は歯周病や重度のムシ歯によるものです。初期のムシ歯はそれほどニオいませんが重度のムシ歯で、そこに膿(うみ)を持つような状態になるとかなりニオいます。それ以外は、汚れを除去することでほとんど解消できるんです。ニオイを元から絶つ方法は、ブラッシング、歯間清掃、舌清掃の3つ。あとはプロケアといって、歯科医に診てもらう方法もあります」
ブラッシングはこれまで解説してもらったとおり、磨き残しのないよう細かい部分まで丁寧に磨くことが大切。今回はあまり習慣のない歯間清掃と舌清掃について、やり方を詳しく教えてもらおう。
汚れが溜まりやすい部分で活躍するフロスやタフトブラシ
「ライオンの調査によると、歯の外側や内側よりも歯と歯の間は歯垢が残りやすいという結果が出ていますので、やはり歯間は要注意なポイントです。歯ブラシだけでなく、フロスや歯間ブラシを使うことで、歯垢の除去率はぐんとアップします。フロスには数種類のタイプがありますが、初めて使う人は簡単に奥まで届く『Y字型』がオススメ。歯科医・歯科衛生士の6割以上もY字型を勧めています(ライオン調べ)。続いて舌清掃ですが、舌には細かい毛のようなものがたくさん生えているので、そこにこびりついている汚れを歯ブラシか舌ブラシで落としましょう。この際、奥から前に掻き出すようにブラッシングし、強く力を入れ過ぎないこと、歯ブラシを往復させず一方向に動かすのがポイントです。就寝前の歯磨き後は、仕上げにデンタルリンスをすると、起床時に口の中がネバネバするのを抑えられてより効果的です」
さらに、口の中の汚れは歯並びとも関係が。歯並びが悪いときれいに歯を磨くことが難しく、歯垢が溜まりやすいのだという。歯並びの悪い部分や奥歯の裏、背の低い親しらずなど、細かい部分の歯垢を落とすのにはタフトブラシ(部分磨き用の毛束がひとつでできた歯ブラシ)を使おう。詰め物の周りを磨くのにも向いているので、二次う蝕の予防にもなり一石二鳥だ。
歯垢から歯石へ…その悪循環に要注意
最後に、混同しがちな“歯垢”と“歯石”について解説してもらった。歯垢だけでなく歯石も口臭の原因という噂を聞くが、果たして?
「歯垢が溜まって固まったもの、それが歯石です。早ければ2~3日で歯垢の石灰化がはじまるので、とれにくくなります。一度歯石がつくと、さらにそこに歯垢がたまり、それがまた歯石になり…と雪だるま式に大きくなります。歯石自体がニオうわけではなくて、歯石についた歯垢などの汚れが口臭の元になるんですね。歯石は歯科医院でないと取れないので、歯垢の段階できちんと落とすことが大切です。歯石のつきやすい場所としては、下の前歯の裏側や、前から数えて6番目の上下奥歯。これらはいずれも唾液腺の近くに生えている歯で、実は唾液が歯垢を石灰化させているんです。ここを狙って磨くようにすれば、歯石がつきづらくなりますよ」
ムシ歯も歯垢の石灰化も、日頃から注意していればセルフケアでの予防は十分に可能ということだ。グルーメン諸君、忙しい朝や早く寝たい夜でも、洗面台の前に立ってほんのひととき歯磨きに集中しよう。丁寧にデンタルケアをしている鏡の中の自分、ちょっとカッコ良く見えるかも。
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取材・文/芳賀直美(OUTSIDERS Inc.)