武士もしていた“身だしなみ”
原田忠流、現代の男らしい美容術

著名人のヘア&メイクアップを担当しながら、人気漫画とのコラボレーションによる作品を発表するなど、国内外での様々な活動で注目を集めている原田忠氏。資生堂のトップヘア&メイクアップアーティストとして業界の最前線で活躍する原田氏に、男の美容の捉え方、そして身だしなみを整えることの必要性などを伺った。

 

――日本の男たちの美容に対する意識や興味が高まる一方で、“男らしくない”とか“女々しい”といったイメージを持っている方もまだまだいると思いますが……。

 

化粧水をつける行為やリップクリームをつける仕草などに、未だに“女性の行動”という認識があり、男性に否定的なイメージを抱かせてしまっているのかもしれませんね。だからといって、スキンケアをすることが“男らしさ”を否定するものではありません。むしろ昔の武士などは、高い美意識を持ち合わせていましたし、現代の日本人男性も美意識は決して低くないと思います。たとえば理髪店や美容室で髪型を整えるなど、“身だしなみ”には気を遣いますよね。スキンケアやヘアケアもその同列として捉えてもらえば、もっと気軽に始めてもらえるのかなと思います。

 

――確かに、身だしなみもスキンケアも、外見の印象をアップさせる作業ですね。

 

身だしなみとは、単に外見上の見た目を整え、相手に好印象を与えるということだけでなく、相手に不快な思いをさせない気遣いや敬う気持ちも表すものだと私は思うんです。ことビジネスシーンにおいては、身だしなみが自分の思いを表面化させるコミュニケーションツールの役割も担っていると思います。例えば、大切な商談時、唇がカサカサに乾燥してヒゲを剃り残したまま現れた商談相手には、あまりいい印象は抱きませんよね。清潔感のある身なりを整えることは、そういったマイナスの印象を与えずに、スムーズに商談に入るためにも効果的です。実際に、社長など会社で重要なポストに就いている50代~60代の男性を対象にセミナーを行った時には、参加された方々の身だしなみに対する意識の高さに驚かされました。眉を自分でカットする方、ネイルケアをする方もいました。その方たちに話を聞くと、自分の影響を受けた部下たちが身だしなみに気を配るようになり、結果、円滑に仕事を進められるようになったと実感されていました。

 

――では具体的に、日常でもビジネスでも役立つケアのポイントがあれば教えて下さい。

 

どのケアから始めてもいいと思いますが、まずは“自分に興味を持つこと”。これが一番大事なポイントだと思います。例えば、スキンケアの場合、男性は洗顔・化粧水・乳液だけで十分。難しいことをする必要はありません。それに加えて、自身の年齢によって生じるシワやシミなどのスペシャルケアは週に1回ぐらいでも構いません。あとは自分の肌質をきちんと理解して、それに合った製品を選ぶということ。20代の時と50代の時では当然必要な成分が異なりますし、一年を通して見てみても、季節の変化によって肌の水分量なども変わります。化粧水だからといって奥様や彼女のものを使わず、きちんと男性用化粧品を選んで下さい。あとはケアを継続させるだけで、手入れされた肌の違いを実感できると思います。分からないことはためらわずにプロに相談してみることも大切ですね。

 

また髪の毛を整えたスタイリング剤の手に残ったもので、眉毛の流れを上にキュッと押し上げるだけでも立派な眉毛ケアです。毛先の流れを少し変えるだけで、相手に与える印象は変わります。セミナーでネイルケアを体験した男性参加者は、爪磨きの後にあきらかに手の所作が変わりました。こういった小さな変化が、自分らしい身だしなみを作り上げ、ひいては“男らしさ”や“ダンディーさ”みたいなものにもつながっていくのではないでしょうか。

 

 

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原田 忠(はらだ・ただし)

2000年資生堂入社。資生堂の宣伝広告のヘアメークを中心に、NYやパリ、東京コレクションなどでも多岐にわたり活動。資生堂UNOではヘアディレクターとして商品開発、ソフト情報の作成などにも携わる。2012年4月より資生堂ビューティートップスペシャリストとして活動を開始。著書に『一流の男のボディケア』(PHP研究所)。

 

 

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原田忠

『男磨きが「一流の男」へと導く』男性のための化粧品特集

 

 

取材・文/中村 慶