男性用スキンケアコスメを紹介する記事を書いている時、ふと思うことがある。「読者の頭の中で消化不良を起こしていないだろうか?」と。「あれもしなきゃダメ」「これはこう使う」などなど、あくまでも参考にして欲しいというメッセージが、読者にとって自由に身動きが取れなくなる、足枷になってしまっていないかと不安になるのだ。
私自身、ファッション誌を読んで、「え?これってもう古いの!?」と、“置いてきぼり感”をむちゃくちゃ感じる時がある。そんな時、情報を上手に料理するための他の材料がないからこそ、そのままストレートに受け取るしかなく、今まで自分なりに楽しんでいた服が突然イヤになってしまうのだが、これと似たような現象が美容メディアの読者にも起こってないのだろうかと、ふと考える。
スキンケアコスメ選びも洋服同様に、「自分に合っているから、自分が好きだから」という自己流であっていいはずだ。しかし、知識が足りない時は、“なんとなく”の感覚と、メディアの一方的な情報だけが頼りであるがゆえに、「あそこではこう言ってた」、「これはどう使うんだっけ…」と、色んな情報がスキンケアをする意欲を邪魔してしまっていないだろうか。
男性にとっては、まずは「スキンケアすること」が大切な一歩であり、もっと気楽に考えていいのに…!!!と、言うことで、今回。“がんじがらめ”状態から解放されることを願い、私なりに考える、メンズコスメの選び方における「実は~じゃなくてもいい」情報をお伝えしたい。
1 高価なものじゃなくてもいい!
ご存知の方も多いと思うが、一般的にスキンケアコスメの原価は安い。モノにもよるが、一番高いのが容器代なんてのも当たり前。なのに、販売価格はぐんと差があるのは、なぜだろう? 広告代、海外のものであれば輸入代、特別な技術を使ったものなら特許代など、値段をハネ上げさせる要因は数多くあるだろうが、どれも製品の成分そのものを直接指すものではない。例えば、私が長年愛用する洗顔料は、ドラッグストアで570円で売られている。しかし、5,000円や8,000円する高級洗顔料よりも肌をツルツルに洗い上げてくれる。「とりあえず高いものを買っておけば安心」という意見に完全反対するわけではないが、値段はあなたの肌への貢献度と必ずしも比例するわけではないのだ。
2 「男性用」のものじゃなくてもいい!
女性と男性では、確かに肌の特性が異なるが、大人になると肌トラブルが共通化してくる。10代の男性向けコスメは皮脂を抑えることが必須でも、30代以降になると男性も乾燥に悩むし、シミやたるみといった女性と同じような悩みを抱える。男性用コスメは、「ネチャネチャと、べたつくのはイヤ」、「何個も使うのは無理。1本で済ませたい」などという、“男性あるある”を汲んだ商品が並ぶので、トライしやすいものが多いのは事実。しかし、「男性用でなければならない」という理由はないのだ。また、男性に比べて、完全レッドオーシャン化した女性コスメ市場の方が価格競争が激化しているため、比較的安価なものが多いというのも魅力のひとつ。男性が女性向けのコスメを使う、という選択肢もアリなのだ。
3 スキンケアの方法は教科書通りに使わなくてもいい!
男性用セミナーでよく聞かれるのが「化粧水のあとは乳液使った方がいいですか? 美容液は一体いつ使うんですか?」というものだ。使い慣れていないものだからこそ、その扱い方に慎重になるのは当然。しかし、完全なルールなんて存在しないことを知って欲しい。化粧水1本だけでもいいし、化粧水のかわりに美容液や乳液1本だけでもいい。ジェルがいい、クリームがいい、なんてのもない。そりゃあ、より美しい肌を目指すなら、フルステップ(化粧水・乳液・美容液・クリーム…)を使うのが理想だろうが、女性でも毎日行っている人ばかりではない。それよりも毎日不快感なく使い続けられるか、塗った後違和感はないか、という方が絶対大切。時間がない時は、化粧水よりも乳液の方が“液垂れ”なく使えるので時短にもなるので、色んな事情を考慮して選んで欲しい。
これらは私の知識と経験に基づく見解だが、試してもらえばきっと納得してもらえるのではないかと思う。グルーメンたちには、人に振り回されて買ったモノではなく、自分なりの理由ある逸品を手にしてもらいたい。きっとそのコスメは、がんじがらめの考えで選ばされたモノよりも、ステキな力を発揮してくれるはずだ。
梅野 利奈(うめの・りな)
ビューティープランナー・美容ライター。外資系経営コンサルティング会社、国内化粧品会社でマーケティング・商品開発に携わり独立。現在は、社会心理学を研究しながら、みんながキラキラになれる「心理美容」を提唱。美容雑誌やファッション誌での執筆活動を中心に、結婚相談所では男性向けセミナー講師なども勤めている。著書に『ブスデトックス~イイ女の逆引き美容テクニック集~』(スタンダードマガジン刊)、『会って3秒で「ステキ」と思わせるデート・お見合いの服装&身だしなみ』(学研刊)。
写真/craig Cloutier
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