男も女も「容姿を磨く」ということにハマると、日々の嬉しい変化がたまらなく愛しくなってくる。鏡が嫌いだった人が、路肩に停まっている車の窓に映る自分をチラッと見ちゃったり、他人の視線が怖いどころか嬉しく感じてきたりして。
特に男性はハマればとことんハマる、スペシャリスト気質を持っている人が多い。「何かにどっぷりとハマる力」を持っていると、どんどん興味を持って調べていくため結果が出るのが早い。そんな姿を何度羨ましく思ったことだろう。結果が出てくると、当然ながら自信も得る。そして、誰だって自信のあるものを見せびらかしたくなるというものだ。「男が見た目で勝負なんて……」と思っていた人ですら、ひとたび自信を手に入れたなら「今の俺なら一生懸命喋らなくたってモテるはずだ」と、自分の魅せ方をガラリ180度方向転換させてしまうことがある。トーク力を磨くのもやめ、さらには今までできていた気遣いまでも半減された結果、魅力が増えるどころか減ってしまうケースだってあるのだ。
私には今でも忘れられない出来事がある。これは女友達の話だが、彼女はとっても知的で、ハマったものはとことん自分のものにしちゃう才能あふれる子だった。見た目もとても美しかったが、それよりも私は彼女の内面に惹かれていた。しかし、彼女がモデルの仕事を始めてから、明らかに変わってしまった。ふたりでカフェに入っても、私が喋っている最中、終始、彼女が目線を向け続けていたのは“私“でなく私の背中にある”鏡“だった。あれだけいつも盛り上がっていた話が、一向に盛り上がらず、その日はとても悲しい気持ちで帰ることとなった。きっと、今の彼女の自信は、「美しい容姿」でほぼ完成されてしまっているのだろうと思った。
美しくなること、またはかっこよくなることはコミュニケーションにおいても重要だ。人から好感を得やすいことも数々の研究でも明らかにされてきた。しかしながら、人の気持ちというものはそう単純ではないはずだ。私は現在、好感をテーマに研究を行っているのだが、そのなかで考えるようになったのが、容姿は表面的な印象を築くが、深く付き合っていきたいと感じる相手にはもっと細かいこと……例えば、笑顔、態度、アイコンタクトなどを求めるのではないのかということ。このように、リアルな人間関係は総合評価で決まっているのではないだろうか。
合コンの場だけでは見た目で勝負ができたとしても、容姿で勝負ができるのはそこまで。男磨きとは、容姿を磨くことだけではない。例え、「ステキな容姿」という魅力を得ても、今までの魅力を棄ててしまっては、ただ魅力の種類がシフトしただけに過ぎないのだ。
自分磨きに関しては、スペシャリスト志向を棄て、マルチな魅力を磨くジェネラリスト志向を目指して、魅力はどんどん重ねていこう! あなたにはすでに、ステキな容姿以上に評価されている魅力がきっとあるはずだから。
梅野 利奈(うめの・りな)
ビューティープランナー・美容ライター。外資系経営コンサルティング会社、国内化粧品会社でマーケティング・商品開発に携わり独立。現在は、社会心理学を研究しながら、みんながキラキラになれる「心理美容」を提唱。美容雑誌やファッション誌での執筆活動を中心に、結婚相談所では男性向けセミナー講師なども勤めている。著書に『ブスデトックス~イイ女の逆引き美容テクニック集~』(スタンダードマガジン刊)、『会って3秒で「ステキ」と思わせるデート・お見合いの服装&身だしなみ』(学研刊)。
写真/masterdesigner
■バックナンバー
あなたに忍び寄る「鼻毛の影」…見えないパーツこそ本質が見える
「高い美意識」に女子はひく!? メンズもサラッと美しくなる時代
ただ「鍛えればモテる」は勘違い、目指すはスリムなチーターボディ
腹筋よりも、鍛えるべきは笑顔筋。男だって笑顔がなきゃ愛されない